夏が来た

2/16
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 「うちの親父って、新しいもの好きで、珍しい物はすぐ買っちゃうだろ?」    「ああ、お前んち金持ちだしな。でもすぐ飽きるんだろ? 知ってるよ」  そう言ったタツに、イッキも同意する。    「そうなんだよ。そこでだ……帰りに家に寄れるか?」    タツとイッキは顔を見合わせてから、不思議そうに呟いた。    「おぉ……別にいいけど…」      僕んちは旧家で、代々受け継がれた家と土地に住んでいる。  5年前、(倒壊の危険あり)と市の行政から指摘を受け、去年2世帯住宅に建て替えたばかりだった。    2階の間取りは3LDK。だから1階の広さは想像つくと思う。  僕はその2階の一室を自分の部屋として使っていた。  ただ、いつか兄貴が結婚したら、そこから追い出される事になっている。僕らの地域では珍しくない話だ。    それに完全な2世帯住宅だと、1階と2階の玄関は別。つまり2階から入れば、ウチの親に気を使う必要がないのだ。  それをいい事に、タツとイッキは、まるで我が家の様に入って来て、キッチンの冷蔵庫を開ける。    「イッキ、俺コーラでいいや。それにしても締め切ってたから、暑いなここ」  タツがまずリビングの冷房を、慣れた手付きで操作した。    「タツ、設定温度16度、風量最強にして」     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!