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「たしかにお前の言うとおりだ。マナミは俺にとって唯一──…大切な存在だ」
「あら、あたし達にとっても“ゆいいつ”よ!ねフリーヤ」
「ええそうよ!オッムだけじゃないわ!アッブもサラーもナキも!あたしにとって皆“ゆいいつ”なんだから!」
「ずるい!? あたしもフリーヤと同じなんだから!」
「ぼくも同じ!」
「まあ、わたしだって負けないわ」
言い合いながら、団子になってぎゅうぎゅうに抱き合う我が子達を愛美も上から抱き締めていた。
その姿にザイードは目を細める。
一人一人がかけがえのない存在。
愛しい妻と我が子達がこんなにも互いを思いやってくれている。
「そうだな、皆それぞれが俺にとって唯一だ──」
ザイードは包み込むようにして両腕で目の前の皆を抱きしめた。
ゆっくりと昇っていく太陽がそんな姿を優しく照している──
抱き合っていた皆の影が縦に大きく伸びていた。
「すごい、お城みたいになってるよ」
抱きしめられながら、隙間から覗いたナキの目に、皆の抱き合った影がまるでお城のような形を砂地に描く。
大きなザイードの影を支えるように皆の影がそこに寄り添っている。
ザイード達はまた空を見上げた。
澄みきった朝の白い空が次第に明るみ始める。
砂漠の国、ファジュル王国の広大な砂丘には陽の光が惜しみ無く燦々と降り注いでいた──。
***
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