prologue

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空虚。 それだけだった。 あの者に見初められ あの者の生涯を共に歩み あの者と浮世を重ねた。 たった10年… だがしかし、その短かきあの者との生活はこの上なく快適で この上なく愛しくて 悠久と言う長い時間を過ごす中でも色褪せる事はなく何時の日も思い出しては頬を赤らめる。 人間などに…そう思っていた我の心に人間らしさと言うものを教え、愛すると言う気持ちを教え、同時に失う事の悲しさも教えてくれた。 ほんに理不尽で冷たくも暖かい人間と言う存在。 我が愛し我が共にと望んだ唯一男だった。 老いた彼の亡骸を看取り 生涯を終えた彼の死を見送り 死しても尚、彼の深い愛に心を痛めた。 その後、我はあの者と紡いだ時間の苦しみも悲しみも全てを無に帰した筈なのに…愛おしさだけは何故残る…。 だが気付かされるのだ。 我は創造神ルルウェルの分身にして世界の秩序を保ち無の力を消去する為に存在する悠久の刻を過ごす不老不死の巫女。 『異邦人・ミスティア』 その様な世迷言など口にしてはならぬ存在だと。 しかしその時、我の前に姿を現した男がいた。 あの者を彷彿させる力と優しさを兼ね備えた英雄王ハリオスの生まれ変わり…いや、輪廻転生しこの世界に舞い戻ったハリオスやも知れぬ存在。 ならば我が身を以って確かめる他ないではないか。 そして。 輪廻転生が起きたと言うならば 我は思う。 次こそは……と。
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