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柚木くんは私の腕を取ると、俊くんの前から離れさせ、自分が彼の前へ立った。
「まだ……別れるなんて言ってねえけど」
「浅野が別れないっていうなら俺は待つしかない」
「は?」
「1年待ったんだ。今更どうってことない。ずっと……好きだったんだ」
「お前……!」
俊くんが柚木くんの襟ぐりを掴み、右手を振り上げた。
咄嗟に身体が動いて、柚木くんと俊くんの間に私の身体は割り込んでいた。
「……なんでだよ」
強く閉じていた目を薄く開けると、そこには拳を振り上げたまま、悲しそうな表情で呟く俊くんがいた。
「ホントはわかってたんだ。茉白が俺のことを友達以上に見てないって。やけに柚木を避ける茉白のことも。柚木が俺に突っかかってくる理由も、夏祭りの日だって……」
夏祭り――2人が妙に射的に熱くなっていたことを思い出した。
俊くんは気づいてたんだと知って、胸の痛みに呼吸が苦しくなる。
「でも……それでも好きだから気づかないフリしてた。別れたくねえから……」
そう言って俊くんは柚木くんからゆっくりと手を離した。
それから唇を噛み締め「でもよ。俺に気持ちがない茉白と一緒にいても苦しいだけだよな」と笑った。
「なんで笑うの? もっと酷いこと言ってくれた方が……」
「言いてえよ……でもなんでだろな。茉白と付き合って、本当に幸せだったから。嫌な思い出にしたくねえんだよ……! ……だから、友達に戻れたらそれでいい。俺らコンビだろ?」
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