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1.元カレ
「紹介するね、彼氏の柚木くん」
高校に入学して1ヶ月が経った頃、気づけば周りはカップルだらけになっていた。
この日はクラスメイトの向坂明歩に、彼氏が出来たから学校帰りに紹介すると言われて駅前のファーストフード店に一緒に来ていた。
私達より10分ほど遅れて現れた彼は別のクラスの男子だったけれど、私は彼のことを知っていた。彼を見た瞬間に忘れかけていた胸の痛みがじわりと広がった。
「……初めまして。相澤です」
「……どうも」
なんとなく明歩には既に彼と知り合いだということは言わない方がいいと咄嗟に判断して嘘をついた。
彼の方も同じ事を思ったのか、私の嘘に合わせてくれたのでホッと胸を撫で下ろす。
「柚木くん、かっこいいでしょ! 一目惚れして告っちゃったんだ」
「うんうん、良かったね!」
柚木くんは告白されたら断らない。それは、私が良く知っている。
「茉白も早く彼氏作んなよ! したらダブルデートとかしてみたいし」
「あー、うん。そのうちね」
予想はしていたが、わりとキツい状況だ。
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