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そこで何かしらの空気を感じ取ったのか、俊くんはもう一度「なんで柚木といんの?」と顔を引きつらせて聞いてきた。
「相澤、やっぱり俺が話すよ」
「俺は茉白に聞いてる」
俊くんの緊張した声を初めて聞いた。
いつも笑顔だった人を私はこれから傷つけと思うと逃げ出したくなる。
でも、もう自分の気持ちに嘘をつくことは出来ないから。
私は息を吸うと俊くんに真っ直ぐに向き合った。
「好きなの」
一瞬、ポカンと口を開けた俊くんは「……誰を? 俺だよな?」と乾いた笑いを浮かべた。
けれど、静かに首を横に振った私に「嘘だろ……なんで?」と呟いた。
「柚木……なのか」
静かに頷く私を見て、俊くんは「終わってたんじゃねえのかよ。からかってたのか?」と吐き捨てるように言った。
「違う! からかってなんかない! 終わってたから俊くんと付き合うことを決めたんだよ」
「じゃあ……なんでこんなことになってんだよ!」
遠くから生徒たちの声が聞こえてくる。
水に浮かべられたヨーヨーが転がり、小さな水音が薄暗い教室に響く。
「そうだ。向坂は? 昨日だって2人でいたよな?」
「向坂にはフラれたよ。これからは友達として付き合いたいって言われた」
「それで? 茉白とより戻すことにしたのか? 俺がいるの知ってて?」
「浅野、俺を殴っていいよ」
静かな教室に緊迫した空気が流れる。
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