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1.日陰の人
夜空に瞬く星をつないで、白鳥だとか鷲だとか琴だとか。そんなものを描き出すなんて、大昔の人たちはとても想像力が豊かだったのだろう。
……っていうか、よほど暇だったんだろう。
あたしには、どうつないでもこの光の点が、何かを形作っているなんて思えない。
ましてや、歌舞伎町から見上げる夜空では、ビルの窓明かりや外灯やネオンサインのせいで、薄っすらと儚い点が数えるほどにしか目に止まらない。
「ヘビ使いなんて、どこにいるんだよ」
タバコの煙を夜空に吹きかけて、吸い殻を空き缶に落とす。
やおら、あたしは窓辺から離れて長テーブルに向かい、パイプ椅子に腰を据え、傍らの段ボールを引き寄せると、箱から数珠つなぎになったコンドームの束を引っ張り出し、一個ずつ切り離していく。単純で退屈な作業。
従業員控室には、あたし以外にも三人のスタッフがいた。
扇風機の前を陣取るデブとヤセのおばちゃんコンビと、スマホゲームに興じる三十路男。
おばちゃんたちは、内容の無いクソみたいな話を途切れることなく続けている。
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