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「はぁ……彼氏欲しい」
緩くパーマをかけた茶髪を弄りながら、日菜子は口癖をこぼした。
途端にドッと笑い声が起こる。
「またそれ?毎日言いすぎ!」
「黙れ彼氏持ち!インスタに遊園地デートの写真とか載せちゃってさぁ、羨ましい!」
「そんなに欲しいなら作れよ~」
「作れるもんなら作ってるっての!あぁっ、こうしている間にも花の女子高生時代は終わりにむかっているのに……!」
顔を覆って嘆くと、また笑いが巻き起こる。
「じゃあさ、今日他校と合コンやるんだけど、日菜子も来る?」
「来る?って、あんた彼氏いるじゃん」
「いーの!遊びだから!そんなことより……」
ドンッ、ガンッ、ガッシャーンという騒々しい音が、談笑をかき消した。
ドンッは、男子生徒が日菜子の机に激突した音で、ガンッはそのまま足を引っかけた音、仕上げのガッシャーンは日菜子の机の上に乗っていた文房具や教科書を一つ残らず床に撒き散らした音だ。
「ちょ、間宮!またぁ!?」
非難の声に、クラスの日陰者・間宮は、肩を縮こまらせ顔を伏せて、ボソボソと何かを言った。ボサボサの髪が顔の半分以上を覆っているため、表情は全くわからない。が、拾いもせず去りもせず、どらやらオロオロしているらしかった。
「あんたさぁ、自分からぶつかってきたんでしょ?拾いなよー」
「間宮、日菜子の机にぶつかりすぎ。ほぼ毎日じゃん」
「……ご、めん」
間宮はもごもご呟き、不器用な手つきで散らばった文房具を拾い始めたが、すぐ取り落としたり、より遠くに転がしてしまったりする。
間宮の不器用さに周りは苛立ったり呆れたり、さらに遠巻きにしているクラスメイトはゲラゲラ笑っている。
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