「宿命のあだ名」

3/14
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
大手家電ストア「イデオン」は業界でも最大手の規模を誇る。 イデオン信濃町店に勤める能代(のしろ)もなみは、最近25歳の誕生日を迎えたばかりだった。 仕事は、速度こそ普通だがしっかりとこなしミスも無く周囲の信頼も厚い。 それでいて、立ち居振る舞いや普段の言動が実年齢を大きく上回っているためか、周りからは実年齢より10~20歳は上に見られてしまう。 本人はいたって気にも留めていなかったが、ある日の仕事終わりに同僚や後輩たちの会話を聞いたことで、自分が想像もしていなかった「あだ名」がついていたのだ。 前橋(まえばし) 「おっす、お疲れー。今日もそこそこ忙しかったな」 諏訪(すわ) 「そうっすね。でも俺らほとんど何もしてないっすけどね」 川崎(かわさき) 「そういやそうだよな。やっぱあの人が知らず知らずのうちにいろいろと進めてくれてるのが大きいよなぁ」 前橋 「ああ、熟女さんには頭が上がんねぇなぁ」 諏訪・川崎 「っすねー。熟女さんバンザイっすわー」 同僚の前橋慎平(しんぺい)、後輩の諏訪岳大(たけひろ)と川崎謙吉(けんきち)の会話に出てきた「熟女」という言葉は、まさかのもなみのことだった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!