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結依にしても紗江子ときちんと会って会話をしたのが、その時が最初で最後だ。その姿を思い出して紗江子に詫びたいと思うが、それは完全にお門違いだろう。謝罪は胸に秘めるしかなかった。
蓮の登場で、両親に初めて不倫をしていたと言う話をした。さすがに全てを正直に告白する勇気はなく嘘を交える事になる。
高校生の頃からとは言えず、フランスで再会したことから話した。ずっと好きだったが、偶然の再会でやけぼっくいに火が点いたと結依が説明した。既婚者の蓮に佑葵を妊娠した事実を伝えられなかったと、蓮と並んで告白した。
蓮がどちらの子も成人するまでは面倒見ようと思っていた、妻とはつい最近別れた、と報告すると、両親は渋々ながら納得してくれた。
「もう、結依を泣かせるな」
智治はたった一言だけ言って、外へ出てしまった。母も眉間に皴を寄せながらも、結依が不幸でないならいいと言ってくれた。
そして。
結依はベッドに横たわる蓮の寝顔を見ていた。歳を重ねても蓮の綺麗な顔は変わらないと見惚れてしまう。
「……ん……」
蓮が僅かに身じろぎして、目を覚ました。
「……もう……また人の寝顔、見てたな……」
眠そうな声で、寝ぼけた目を裸の腕で隠した。
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