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その夜、オレたちは学校のプールに忍び込んだ。
夏休みのさなか、茹だるように暑い日の、熱を帯びたままの真夜中だった。
「ひゃ~! 超気持ちいい!!」
「お前も早く来いよ!」
ざばん、ざばんと盛大にしぶきのあがる音が響く。連れ立って来た仲間二人は早々に水中へ身を投じたようだ。もし水が張られてなかったらと危惧もしたが、杞憂に終わったらしい。着替えの遅れたオレは足早にプールサイドに上がると、二人に続くべく水面にダイブしようとして――
ふと、駆け出す寸前の足を止めた。
「今日は満月か」
暗い水面に、歪な形の月が浮いていた。オレは空とプールとを交互に見やる。なるほど頭上では見事な満月が皓々と輝き、ゆれる水面に写りこんでいるというわけだ。
「そこ飛び込んだら100点な!!」
水際に立つオレに、連れのどちらかが深夜の謎テンションで謎な煽りを入れる。
「まかせろ!!!」
オレはオレで、この場所の解放感と、夏休み特有の『何かしらやらかしたい衝動』とが重なる。
……結局のところ、オレたち皆バカだったのだ。
オレは大げさに勢いをつけて見せると、水面の月めがけて思い切りジャンプした。
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