WEDDING TABOO

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───それが引き金になった ある日気がつくと智春は置き手紙を一通残して忽然と私の前から消えたのだ。 『このままでいたら紗奈は幸せになれない。だから俺は紗奈の前から消えます』 そう書かれた手紙といつの間に貯めていたのか分からない程に莫大な金額が印字されている私名義の通帳だけが手元に残った。 智春が勤めていた事務所に駆け込むと智春は海外のとある国で働くことになり赴任したのだと告げられた。 本人の希望により赴任先の国や住所などは教えられないと付け加えられた。 あれから6年。 失意の中、私は兄から受けた傷を抱きながらも前を向いて生きて行こうと必死に足掻いて来た。 その間に看護師になり仕事と共に新しい恋も何度かして、そしてようやく兄以上に愛することが出来ると思った男性と巡り合い、晴れて縁付きこの良き日を迎えたというのに──…… 「ふぁ……あ、あっ」 ウェディングドレスを器用にまくり上げ私は椅子に座った智春の上に跨っていた。 「あっ、あ」 「紗奈……凄くいやらしくなっている」 「っ」 「俺以外の男と……何人、何度寝た」 「そ……そんなの……お兄ちゃんだってっ」 腰掛けている椅子が軋む音を出し続けている。 神聖な式場の控室で純白の聖なるドレスを身に着けていやらしく腰を振る私は花嫁失格だ。 一生愛すると誓った彼ではない男の上であんあん喘いでいる私は幸せになる資格はない。
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