1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
本文
高校の卒業式の終わりに、幼なじみの彼女から告白された彼は、家出を決意した。
彼女に出逢ったのは幼稚園の頃だった。真向いの家に引っ越してきたのだ。
同い年だった二人は、性別は違えども妙に馬が合い、いつも一緒だった。親同士の仲も良かったので、家族ぐるみの関係をずっと続けてきた。
卒業式には両方の親が参加し、自分の子でもないのにしっかりカメラを回して、卒業証書を受け取るときには号泣までして、学び舎を去る際には必ず合同で写真を撮った。それを小中、そして高と、まるで恒例行事のように繰り返してきたので、もはや家族と呼べる間柄だった。
卒業式が終われば、感動を抑え切れない親たちに連行され、卒業祝いのパーティに参加させられる。毎度のことながら強制参加だ。少しの休憩も許されず、卒業の余韻もへったくれも無い。
パーティ会場はいつも、彼の母親が営んでいる小さな洋食店だ。誕生日やクリスマスなどの催しは必ずそこで行ってきた。二人にとっては毎日のオヤツを食べるところでもあり、彼女にとっては、共働きの両親を待つ託児所でもあった。そして時には、皆で夕食を取る食卓でもあった。
最初のコメントを投稿しよう!