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職場内は、朝から異様な雰囲気に包まれていた。
手を動かしながらも、誰もが心は別のところにあるといったような顔をしている。
わたしはスケジュール帳にペンを走らせながら、何度も空っぽのままの古森課長の席を盗み見た。
まもなく、総文社大賞受賞者と、受賞作品が決まる。
デスクに座って原稿を読んでいる水元さんの細い背中にも、どこか緊張が漂っているような気がした。
もし茜田先生の作品が選ばれれば、最年少での受賞となる。
若い作家先生の作品が最優秀賞に輝くことはまずない。
期待しすぎてはいけない。
そう思うのに、先程から心臓は期待の早鐘を打ち続けている。
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