第1章死の狭間からの・・・・・

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第1章死の狭間からの・・・・・

毅『病室のベッド・・・』 目が覚めるとそこは毅の自室のベッドではありません。目覚めてからあたりを見渡すとアイボリーのカーテンに囲まれており、数年前に事故で脳に重大な損傷をした時に入院し寝ていた時に目にしていたものと同じです。 毅は目覚める前の記憶を探ります。直近で思い出せたのはタイヤから悲鳴のような高音を響かせて急接近している傾いだトラックです。。もっと掘り下げて思い出してみました。これから最終回放映予定のアニメの放送時間が迫っており周りを碌に見ず飛び出したせいか、重量のある物体が衝突したような鈍く低い音がした方向を見たときにはトラックが数メートル先まで接近しており、どう考えても回避が間に合いません。そして走馬灯。異世界に召喚され、低いレベルの能力しか身についていなかったため地道に訓練し経験値を積み重ねレベルを上げていきました。冒険の道すがら成り行きもあって下心満載で困っていた美少女たちを助け信頼を勝ち取り着々とハーレムを構築していき、ラスボスである邪神の本拠地に乗り込み、これから邪神を打倒して美少女たちと結ばれるハッピーエンドで終わる最終回を迎えるはずのアニメの粗筋を走馬灯で見てしまいました。よほど最終回が気になっていたんですね。邪神を討伐するため着々と装備を整え決定打となる魔術を習得し間違いなくイレギュラーが無ければ邪神を打倒して世界平和を齎すことができたはずでした。そんな最終決戦を控えた毅は 甲斐真田学園への進学を1週間後に控えていたにもかかわらずバイト帰りに自転車で交差点を渡ろうとしていました。すると、交差点から大きなブレーキ音と車のぶつかる音がし、音のした方角に目を向けるとトラックが傾いて片側の車輪が浮いた状態でこちらに猛スピードで向かって来ています。 あらためて頭の中ではここ数年の思いや記憶があれこれ思い浮かびます。 あ~これが本当の走馬灯かぁと思い、自分に小学生の時から四六時中付きまとっていた戸口恵梨香のことを、中学じゃクラスメートの男子の目が気になって邪険にしたけどもっとかまってあげれば良いかった。来週恵梨香と同じ高校に入学するけど高校じゃもっとかまってあげようなどと後悔が巡ります。 トラックが目前まで迫り、視界がブレたところで見ていたテレビの電源が突然切断されたように視覚がぷっつりと途絶えて記憶がありません。 それからいかほど時間が経ったのかわかりませんが、あのアニメを見ていなかったことに気が付きます。 毅「ひまっら(しまった)見ふごひら(見過ごした)!」飛び起きようと思いましたが、自分の体中にウエートトレーニング用のウェイトが巻きつけられているように重くて動きません。それでも動かそうとすると全身にビシリと痛みが走ります。 ???「あら、目が覚めたの?意識不明状態が1週間続いて初めて発するセリフがそれ?」声の主を見ようと目を向けますが瞼すら海苔で貼りつけられたように開けようとしてもパリパリと糊を剥がすように開けなければなりません。突然飛び込んできた映像に網膜が驚いたようでただ眩しいだけで映像の判別ができません。それでも何とか見ようと意識したおかげか眼球が焦点を合わせ始めてくれました。ベッドに寝ているらしく、四方を白いカーテンで囲まれていて、少々しみのついた白い天井が見えました。先ほどから気になっていた声のする方に目を向けると ベッドの傍らに信じられないくらい綺麗な若い女性がいます。 毅『えらい美人だけどどこかで見たことあるなぁ。誰だっけ? そうだ、甲斐真田高校の学校紹介ビデオに出てきて学校の案内してくれた人だ。生徒会長さんだったかな?確か、甲斐真田学園経営母体の塩川財団総帥の孫娘だって言ってたな』 麻酔がまだ残っているのか頭がぼんやりしているので寝てしまいたいのですが、どうにもベッドサイドの女性が気になって仕方ありません。 その女性の美貌が気になり意識から追いやることができず目が離せないのです。かくいう毅は彼女こそいませんが近所に住んでいて義務教育の間いつも付きまとっており高校も同じ甲斐真田学園を受験し入学予定の幼馴染がいそばにいるので格別女性に興味を持っているわけではないのですが、その幼馴染は彼女と言うより姉弟に近い関係です。例えばオタクのけがあり運動全般苦手な毅に対し、幼馴染は体格にも恵まれ運動は満遍なく特異なむしろ脳筋気味で本人は軽スキンシップのつもりでも毅にとっては暴力的なあしらいをされてしまい、怪我をしてしまうことが頻繁にありました。それに引き換え、ベッドサイドにいる女性には気品を感じ、ガサツでDVな幼馴染と比べると同じ霊長類と認めてしまってよいものかどうかはなはだ疑問に思ってしまうほどで他に視線を移そうとしてもどうしても視線を離すことができないほど魅かれてしまっています。 毅はその幼馴染の女の子とは特別付き合ってはいないものの四六時中付きまとわれてうっとおしく思っているので、格別彼女が欲しいとは思っていないのですが枕元の女性に対してはずっとそばにいたいという欲求が止まりません。どうにかして接点を持とうと思い、混乱しながら毅は震える手を彼女の方へn伸ばし、「ぁ・・」とかすれた声を出すのが精いっぱいでした。 その女性は毅の動きに気付き、 涼子「あぁ、目が覚めたのね。
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