インチキで破廉恥で、途方もなく純情。

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「あなたは、大きくなったら青柳家の次期当主、正嘉(しょうか)さまへ輿入れするのですよ。ですから、キチンとした教養を身に付けて、誰よりも美しくならねばいけませんよ」  それは、子供の頃から、呪文のようにずっと言われていた言葉だ。  母は、(かなで)を膝上に抱いては、毎日同じ言葉を繰り返す。  メイド達も、それは同じだ。 「昔は、オメガといえばとんでもなく身分の低い、ただ子供を産むだけの肉人形の様な存在として、随分とぞんざいに扱われていたのですよ」 「そうです、本当に酷い扱われようでした」  そう優しく話しかけながら、メイド達は奏の身体に香油を塗り込めるように、マッサージを繰り返す。  毎日、毎日。とても丁寧に。 「――ですから、あなたは本当に幸運な時代に産まれたのです」 「幸運? 」 「そうですとも。オメガは、昔は奴隷の様な扱いで売り買いされたくらいだもの」 「そうなんだ……」 「ええ。しかし、時代は大きく変わりました。アルファよりもベータよりも、元々オメガは数は少なかったのですが、十年前、オメガだけが罹る奇病により、オメガは更にその数を減らしたのです。そして、アルファやベータにも異変が起こりました。それは、彼らの種族間では、子供がなかなか産まれ難くなってしまうという異変でした」 「――――それは、知ってます。家庭教師の先生が仰っていました」  そう返すと、メイドはニッコリと笑った。 「そうですか。さすが、ご聡明でいらっしゃる」
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