遠くて近しい君のレビュー

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 ゲーム機につないだ電話線から、異音が鳴り響く。  ピィィィィィィ、ガァァァァァァ……。  モデムから鳴り響くアクセス音は、親に注意されないか、平治はいつも緊張する。  ――ただし23時を過ぎれば、最新の情報が満ちる電子の海へ、気にすることなく接続し放題。  噂に聞いていたインターネットは、平治の夜を一変させた。  検索サイトのコミニティに入り、リンクをたどり、ネットサーフィン。  多種多様のサイトの造りはバラバラで、情報の質にもまとまりがなく、管理人の好みや偏見も少なくない。 (でも、だからこそ、面白い)  書店にある雑誌や書籍なんかだと、どこか硬く整ったような文面が載っている。  どれだけ毒づいたり辛口でも、なにかに配慮したような匂いが残る文面に、物足りなさを覚えたりもした。  ――でも、インターネットの世界は、違った。  そのなかでも平治が気にいっているのは、リンクが集合している、仮想都市。  無料のホームページが集まった場所を、一つの街として見立て、そこに住むという体裁のサイトだ。 (……おっ。同じ映画の感想だ)  今日も平治は、電子の海を泳ぐ。  求めるのは、自分の趣味でもある、映画の感想サイト。  未だ見ぬ、自分と違う、それなのに心地よい誰かを探して。
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