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過去の思い出
顔を俯かせたままうなづいた。
...お前も
「それにしても高校以来ずっと連絡も取れなかったのに、ここに来てまた会えるなんてな!やっぱり俺達は親友ってことか。」
…親友か
親友となんて、思ったことはない。
彼は、いつも明るくて人気があるけど女運がない奴で初めは関わろうとすらしなかった。
自分が一番関わろうとしない人種だからだ。
彼はあの時もこんな風に陽気に声をかけて来た。
「俺さこの学校に同じ中学の奴居なくてさ。だからせっかく隣に座ってるし、同じクラスってことで…友達になってください!」
高校1年の入学式偶然隣になった男が彼だった。
活発そうな青年で当時から根暗で人との関わりを拒む傾向の自分からは決して関わりを持とうとは思わないだろう。
今の自分ですら関わりを持とうとしないと思える程眩しい存在だった。
そんな彼に考えもしなかった友達になって欲しいと言う話を持ちかけられた自分は少し中に浮いたような気になったのを覚えている。
「わかった…わかったよ。友達でしょ、なるよ…だからもう少し小さい声で…」
…なんなんだよこいつ...けど友達って...
「…っえ…まじで!…よっしゃ~!!」
「わかったから…静かに…」
こんな自分と友達になれたくらいではしゃぐ彼と自分をなだめるように注意を促した。
しかし、彼が静まった時は既に遅かったようで俯いていたために自分の足元の陰りが濃くなったことに気づいてしまった。
恐る恐る隣を向くと先生が苦笑いをしながら立っていた。
最悪なことに、入学式の日に彼と一緒に職員室に呼び出された。
そして、目立たないようにと決め込んでいたはずの高校生活が、確実にクラスで注目を集めることから始まりを迎えることになってしまった。
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