第二章 『小町』

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 観えない画面を細目にして一生懸命に見ようとしている多門が口を尖らせる。 「なんつーか、聞いたことある声だけどなんて言う奴なの?」 「えーと新聞にはマダム蝶子ってあるよ」 「誰だよ」  須藤くんの答えに突っ込んだ多門と同じことを思う。  けれど少し考えた多門が拳で手を叩く古臭い仕草で思い出したというアクションをする。 「ソイツ、西のローカルに出てた奴だ。ケバイ化粧の男でしょ」 「そうそう。僕は初めて見るなぁ。上守さん、知ってる?」  首を振って答えると、多門が肩を竦めた。 「何回か清藤に来たことがあったはずだ。父さんが相手にしてたからオレはノータッチだったけど」 「清藤に来たことあるってことはさ……」  実力は清藤以下ってことで。  今回のことはマダム蝶子の手には負えない可能性もある訳で。  しかもマダム蝶子が手に負えない時に頼っていた清藤の多門がヤバいっていうくらいのモノな訳で。  どう考えても、何かあっても対処できないんじゃないだろうか。 「つーかソイツが出て来たってことは、西界隈の廃村なんだろ。どこかな。映像が観れれば特定出来るんだけどなー」 「とりあえず何かが起こったら考えれば良いんじゃない?」  須藤くんの言葉に二人で頷いて、再び画面に目をやるけどやっぱり赤いままだった。
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