第九話「ファッションウィーク」

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 一砥は座布団の横に正座したまま、「はい」と答えた。 「花衣のことを侮辱されたため、怒りを抑えられませんでした」  一砥は続けて言った。 「高蝶泰聖はこうも言いました。花衣は、亜利紗の双子の姉だと」 「何だと?」  驚く剛蔵に、一砥は泰聖から電話があったところまで遡り、事実のみを詳細に報告した。  剛蔵は黙って話を聞いて、一砥の話が終わった後も、両腕を組んで一言も言葉を発しなかった。  それを怒りゆえの反応と見て、一砥は冷静に伝えた。 「……事情はどうあれ、大株主を立腹させたことは私の失態です。社長の任を解くなり勘当するなり、納得のいく処分をお決め下さい」 「……その必要はない」  剛蔵も冷静だった。 「高蝶泰聖の胸ぐらを掴んで凄んだそうだが、もしまた同じ状況になったら、次は我慢するのか?」 「しません」  一砥は即答した。 「私にも許せることと許せないことがあります。花衣への侮辱は、許せないことでした。ですからまた同じことがあれば、私はまた同じ対応をします。あるいは一発くらい殴るやもしれません」 「祖父が成り上がりと侮辱されたことについては、許せることなのか」 「事実、成り上がりでしょう?」  途端に剛蔵はプッと噴き、「違いない」と大口を開けて笑った。     
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