la presence d'une autre personne

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 ケイシーと繋いだ手が熱くなる。 「……アカデミーでの事さ。僕、成績が良くないんだ。周りも、『ハリス』なのに勉強出来ないのは如何なものかって。確かに悔しいさ。例え成績が悪くともアカデミーは誰でも卒業させるのさ。それだけの機関さ。形だけのアカデミーに何の意味があるのさ!その先はもう決まった道を行くだけ。誰も僕の本心を知らない!嫌なんだ、小さい頃から勉強ばかりの日々を過ごし、卒業したら父のもとに付き、いずれ父を継いでハリス家当主になる。そんな敷かれたレールを進むのがうんざりなんだ!」  シンの眼が少し赤らんでいる。  ケイシーは静かにじっとシンを見つめたまま頷いた。 「僕にもやりたい事があるんだ。こんな小さな世界じゃなくて、外の世界を歩きたいんだ。生を実感したいんだ!」  心の膿をすべて吐き出し、思いの丈を伝えたその顔は、朝陽を浴びて輝く朝露のようだった。 「素敵……やっと本当のシンに会えた気がする」  シンの思いに呼応し、ケイシーも手を強く握りしめた。 「私もね……やりたい事があるの」 「どんな事?」 「フフ、こっちに来て」  ケイシーは立ち上がり、大樹の下へと駆け寄った。  シンもまた、ケイシーを追い大樹へ向かう。 「シン……眼を閉じて。私が話し終わるまで眼を開けないでね?」  促されるままに向かい合い眼を閉じ、不思議そうに眉をひそめながら頷いた。  すると、甘い薔薇の香りがシンを包み、優しく温もりを感じさせる鼓動が伝わってきた。  耳元でケイシーが囁く。 「私ね、お母様に会いたいの。どこかにいるお母様に」  ケイシーの唇が首筋を伝う。  一瞬、柔らかな感触がその場にとどまった。  (おもむろ)にシンの鼓動が高鳴る。  何故だかデジャヴに似た懐かしさをも感じた。 「……いいわよ、眼を開けて。フフ」  甘い薔薇の香りが遠ざかっていく。  けれども首元のあの感触は残ったままだった。  シンは、余韻に浸りながらそっと眼を開けた。 「フフ!これも魔女が書いた本に書いてあったの!大きな木の下でこうすると願いが叶うんですって」 「きっと叶うさ」  日は西へと傾き始め、二人の影が仲良く東へ向いていた。シンは手を伸ばしケイシーを迎え、二人は丘を後にした。
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