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「ねえねえっ。翔くんってもしかして、さくらちゃんのことが好きなんじゃないっ?」
「ええっ? まさか」
「だって、さくらちゃんたち、幼稚園からずっと一緒なんでしょ? 翔くん、子供の頃から好きな人いるって言ってたしっ」
「ああ、あれは多分――」
さくらは、後ろへ振り向いた。
すると、翔もこちらへ振り向いていた。
窓の外で春一番が吹いて、桜吹雪が舞う。
二人は、その花びらとまったく同じ色に頬を染めてから、同時に前へ向き直った。
「違う、と思うけど。どうかな。ちょっと、分かんない……」
「さくらちゃん、顔真っ赤だよ? 大丈夫?」
「うん……」
さくらは、両腕に抱えた教科書で、火照った顔を扇いだ。
変わっていくものと、変わらないもの。そのどちらも、大切で、愛おしい。
そんなことを知ったのは、高校二年のこと。
(了)
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