7. 二人で見上げた空

1/6
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ

7. 二人で見上げた空

目が醒めると、窓からの明るい光が薄いカーテン越しに部屋を照らしていた。 (どこだ……?) ぼんやりと天井を見つめる。見覚えのある部屋だった。 体に掛けられているキルトも、壁のパッチワークや絵も、緑色のカーテンも。生暖かい空気の中、時々冷たい風が吹き込んで部屋の中で溶けている。 (……リーナ!) ハッとして飛び起きようとしたが体が動かない。かなりの衝撃を受けたのだろう。指や関節を少しずつ曲げながら体の感覚を確かめた。右腕が動かない。指先の感覚もなかった。 「チッ……」 小さく舌打ちし、溜め息をついて全身の力を抜いた。 遠くの方で入り口の扉が閉まる。板張りの床に足音が響いた。あの早歩きはリーナに間違いない。ほっと胸をなで下ろす。 それは階段を上ってどんどんこちらに近づいてきた。 フォルはそわそわしてしまった。予想通り、気を遣って小さな音を立てて開けられる扉。思わず目を閉じてしまった。額に汗がにじむ。 パタン、と扉が閉まり、小さな足音が隣で止まった。隣で人がしゃがみこむ気配。起きるタイミングを逃してしまった。甘い香りがする。あの時湖で嗅いだものと同じだ。その匂いで相手を特定できた。 「汗かいてる」 吐息と共に呟く声が優しい。ふわりと柔らかい質感が顔に触れる。ガーゼのハンカチでそっと汗を拭いてくれているのが分かった。動揺して余計に汗の量が増える。 リーナが心配そうに覗き込んでくるのを感じ、呼吸困難に陥りそうになった。ハンカチが首元に当たると、フォルはガシッとその手首を掴んだ。 「ぎゃああっ!」 悲鳴をあげながらリーナは仰け反ったが、手首を捕まれているので逃げられない。それでも足が滑って床に尻餅をついてしまった。 いつの間にか止めてしまっていた息を「ブハッ」と一気に吐き出すフォル。そっと目を開けるとリーナが真っ青な顔でこちらを見ていた。 「お、起きてるならそう言ってよ!」 「すまない、つい……」 「もうっ」
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!