さよならの時

7/7
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
それから毎日、サンタに『いってらっしゃい』と言い続けた。時間がある時には話もした。 やっぱりサンタと話してる時間は楽しい。 でも、さよならの時はやってくるのだ。 8月31日、PM23時 私は部屋の窓を開けて外を眺める。 もうすぐサンタの事、忘れちゃうんだ・・・。 「おい!」 ボーっとしていると、窓の外にサンタがいた。 「さ、サンタ!」 「別れの・・挨拶に来たぜ。」 サンタは空に浮いている。やっぱり違う世界のヒトなんだ。 「私は・・さよならなんて言わないから。」 サンタの胸ぐらを掴んで私の方へ引き寄せる。 そして・・・ サンタの唇を奪った。 「ったく、色気のないキスだな。」 唇が離れると、サンタは笑いながら言った。 「私のプレゼント、ちゃんと持ってきてよね。記憶は無くなっても・・待ってるから。」 私は笑顔を見せるが、涙が溢れて止まらなかった。 「お前が俺を忘れても、俺はちゃんと凛の事・・覚えとくから。」 サンタは指で私の涙を拭く。 「サンタ、時間だよ。」 戸中居さんに言われ、サンタは私から離れた。 「サンタ、いってらっしゃい。」 さよならは言わない。 だって、また会えるから・・・ 9月1日、AM0時 私の中からサンタ達の記憶が消えた。 「あれ、私何で泣いてるんだろう?」 涙の理由(わけ)も知らず、私は窓を閉めた。 そして、またいつもの毎日が始まる。 12月24日、PM 23時 「あれ、何だろう?」 ふと気がつくと、窓のところにプレゼントの様な小さな箱が置いてある。 私はそっと箱を開けた。 「・・空っぽ?」 イタズラかな、と思ったその瞬間・・・ 「サンタ!」 慌てて窓を開け、サンタを探す。 そう・・私の記憶が戻ってきたのだ。 12月25日、AM 0時 「お前も無茶なプレゼントをお願いしやがって。」 声のする方を見ると、サンタクロースの格好したサンタがいた。 「でも、ちゃんと持ってきてくれたじゃない、プレゼント。」 「当たり前だろ?サンタクロースなんだから。」 サンタはそう言うと、私の後頭部をがっちり掴み、強引にキスをしてきた。 「何てムードのないキス。」 「お前には言われなくない。」 私達は2人でクスッと笑い、部屋に入った。 サンタのポケットから1枚の紙が落ちる。 『私のサンタに関する記憶を戻して下さい・・・』 それは私の書いた紙だった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!