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沙知絵は、葵奈の母親を探していたわけでは無く、遼輝の母である、参后と、妹である、皇女の行方を捜していた時に得た、副産物である。
「たまたま得ただけの情報ですがね、これは。本来ならいち早く参后様にお目通りしたいのですが、季節柄、葵奈さんの母君をお救いすることを優先するべきだ、という判断に至っただけですから」
将希を流し目で一見すると、ため息を吐きながら、沙知絵は説明した。
「私の為に、予定が変わってしまい申し訳ありません、遼輝さんも家族が心配でしょうに」
「大丈夫だ、母君と妹が無事である事を知れただけでも、十分であるからな」
後ろめたそうに、小声で話す葵奈に、遼輝は笑みを送る。
参后と皇女は、東の地にある、藤宮家の都にて保護されており、無事である事は将希から確かな情報として得ていた。
その為、冬になる前に、葵奈の母である可能性が高い、北の祠を目指すべきだと、皆で話し合い、決めたのである。
「あれだ、あそこがわが故郷であり、最果ての地、『夜雲』だ」
断崖絶壁の海岸沿いにたどり付き、見えたのは、海の向こうに広がる大地だった。
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