無垢な子猫の優しさに付け入る変態

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 ――シオン君が、自分で蒔いた種を回収しに行った。猫屋敷さんと同じ立場として、あれはしんどいな。  シオン君の容姿はズバ抜けて美しい、美少年的に。そして無自覚のしぐさとセリフが、もしも俺が猫屋敷さんなら俺は卒倒しているか全力で車の中に駆け込んでいるところだろう。  普通に、シオン君が可愛らしいと思った。断じて浮気ではない。ここ、重要。 「あぁー重かった、かも。なになに、小鳥ちゃんもしかして、子猫ちゃんに惚れちゃったぁ?うおっ!」 「そんなわけないじゃないッスか。主催者とその保護者が不在、ゲストのみなのが複雑なだけッス。というよりドクトル。あの子がアホみたいに優しい子で命拾いしましたね」 「ほんとにねぇ、お姫様って呼び名が似合うくらいの、たぶん。あぁ、腹減ったかも。ビールー……えぇやだぁっ!」 「だめよドクトル、あんたはあたしの隣。はいビール。もう皆ほとんど食べちゃったからあんまり残ってないわよ?何がいい?お稲荷さん?あれはダメ、ダブル真藤さん専用なの。ダメったらダメ!!」  テーブルの前に座り。料理を眺めながらさりげなく俺の隣の香さんに手を伸ばしていたので、肩をつかんで爪を食いこませる。  本庄さんが香さんから1番離れた、自分の隣にドクトルを――耳をつかんで――引っ張り世話をする。  使っていない小皿と割り箸を用意して適当によそう姿は、どこか母親……お姉さんを彷彿とさせる。心底嫌ってはいても、こういう風に世話をするのはやはり女性だからなのか。
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