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1 新しいルール
瀬田晴季が一度は飛び出したものの、秋川慎一と一緒に暮らしている部屋へと帰って来て、三週間が過ぎた。
その日の夜、二十時過ぎに帰宅した瀬田は、細長い紙製の手提げ袋を携えていた。
「お土産です。慎一さんの好みだといいけど」
瀬田が本気で、そう、ほとんど祈る様な思いで言い、差し出してきた紙袋を秋川は微笑んで受け取った。
「ありがとう。晴季はセンスがいいから大丈夫だよ」
つい三週間前に、大学の部活の後輩にしてルームメイトから、恋人へとなったばかりの瀬田晴季は週末になると、秋川が好きなワインを買って来る。
最初の週末は気合いを入れたのか、将又定員に勧められるままに買ってしまったのか、結構なヴィンテージのだったので、秋川は今後もしも、デイリーワインを買い求める際には二千円以下のにすること!!と瀬田に厳命を下した。
普段の日に脚のないグラスで飲むのならば、その価格帯で秋川には十分だった。
ワインの味と価格とは比例することが多いが、所詮は嗜好品なので、必ずしもそうであるとは限らない。と秋川は思っている。
そうでも思わなければ、一介の会社員である我が身が空しい。
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