6.

10/21
344人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
そんな明香里に健斗は溜息で応える、そして乱暴にも天之御中主神の上衣を無理矢理はだけさせた。 「きゃあ」 小さな声を上げたのは、天之御中主神だ。 「え、権禰宜さ……!」 明香里も声を上げると、 「よく見てください」 健斗は冷静な声で言う。 「男が持っていたものはカッターです、途中で刃も折れたのでしょう、ほぼかすり傷と言っていい怪我です」 「え、そんな……」 血も出ていたのに、と思ってその傷を見たが、確かに長さは5センチほどもあるが、深さはないようだ、既に血も止まっている。 「これくらい、気合で治しなさい」 健斗は天之御中主神の引き締まった背中を叩いた。 「痛い! そんな事言ったって、本当にしくしくと痛むのだ……! 俺がこんなにも痛いのだ、明香里も痛いであろう」 言われて明香里はそうだと思い出した、自身も手の平を擦りむいたのだ。 思わずその手の平を見た、やはり血はもう止まっている、小さな砂利がついているから洗い流さなくては、などと思っていると。 天之御中主神はその手を包み込んだ、優しい仕草に明香里の胸はときめく。 「明香里、済まなかった、お前を巻き込んでしまった」 「ううん、助けてくれたんだもん、嬉しかったよ、ありがと」 「明香里……」 「おや、明香里さんも怪我を。すぐに手当てをしましょう」     
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!