6.

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声を上げる明香里の背後にいた男は奇声を上げながら立ち上がり、妙なフォームのまま走り去っていく。やはりその事態を察したのだ、関わるまいと一目散に逃げてしまう。 「天之くん、やだよぉ!」 明香里の泣き声を聞きながら、天之御中主神の背に刃物を立てていた男はにやりと笑った。 「へへ……妙な邪魔、するからだ……」 呟いて、刃物を抜く。再度突き立てようとしたのか、思い切り振り上げたところを健斗に手首を掴まれた。 「な……!」 声を上げ、腕を払おうとしたが、しようと思っただけであっさり手首を返され握っていたカッターを落とされ、地面にうつ伏せに押さえこまれた。 「こう見えても、合気道を心得ておりまして」 健斗は男を冷たく見下ろしながら言った。 「天之くん! 天之くん!」 明香里の声にそちらを見た。 神様が死ぬわけないでしょう、そう言おうと思って躊躇う。明香里の腕の中の天之御中主神はぐったりとしていた、しかも、その背には赤いものが滲み、その染みはどんどん広がっていく。 「──とりあえず、室内に運びましょう」 健斗の声に、明香里は泣きながら頷いた。 * 「──これは」 背を赤い染みを背負った天之御中主神を見て、白狐は絶句する。 「痛い……痛い……」 天之御中主神はしくしく泣きながら呟く。 「権禰宜さん! 早く救急車を……!」 天之御中主神を抱き締めながら、明香里は訴えた。     
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