346人が本棚に入れています
本棚に追加
/173ページ
健斗が脇から覗き込んで言った。
「俺の手当てもしろ!」
天之御中主神が喚く。
「それくらい自力で治しなさいませ、あなたは神様でしょう。それよりも妙齢の女性の手に傷がある方が大問題です」
「それはまあ、そうだが……」
「そこです!」
突然、狐が大きな声を上げた。
「なんだ、狐」
天之御中主神が面倒そうに聞き返す。
「顕現しておるとはいえ、神が怪我をするなど、しかも血を流すなどあるのでしょうか!?」
言われて皆で顔を見合わせる。
「俺が鈍くさいと言いたいのか」
天之御中主神は目を座らせて訴えた。
「そうではありませぬ! あなたさまは今は霊体と肉体の間の存在だと言いたいのです! 霊体は痛みも感じなければ、血など流れていない筈!」
「──しかし、現に俺は怪我をした、血も出ている」
「確かに、こんなにも長い時間顕現されている神の存在を私は知りません! あなた様の身に何が起きているのです!?」
「さあ。そうは言われても……」
呟いてから、天之御中主神はぶるりと体を震わせ、裸のままの自身の体を抱き締めた。
「寒……っ」
慌てて白衣に袖を通して、前を合わせる。
「──寒い?」
思わず明香里は呟いた。
「え? ああ、寒い……」
最初のコメントを投稿しよう!