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「ぁ……、私、生きてる……?」
ふと気付くと、私は学園の廊下に1人居た。
胸に剣は刺さっていないし、あの時口中に広がった血の味もしない。
まるで、全てが悪い夢であったようだ。
けれど、心は覚えている。
あの恐怖や苦しみ、絶望を。
ふと横にある窓を覗くと、外には多くの初々しい少年少女達。
胸に付けられた花から、今日が入学式だと分かる。
入学式など半年以上前に終えたというのに。
何故?
あれは何だったの?
夢?
私は本当に生きているの?
心臓がドクドクと鳴っている。
汗が止まらない。
今すぐに泣き出して、叫びだしてしまいたい。
1度経験した死への恐怖が、私を苦しめる。
死にたくない。
死にたくない。
でも、あれが夢なら────
「わたくし、は、まだ間に合う……?」
私があの女に何もしななければ、彼等が私を憎悪する事も私が死ぬ事もないのだと、この時私はそんな希望にすがった。
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