エピソード1 旅人

14/61
70人が本棚に入れています
本棚に追加
/1248ページ
「やぁカナ。今帰ったよ」 「お父さん!」 「しっかり店番してたか?」 「当たり前じゃない」 どうやら、カナのお父さんが、薬草の採取から戻って来たみたいです。 カナの頭にお父さんが手を置き、そのまま頭を撫でました。 カナが笑顔になります。 「ああ、お客さんがいたのか。見ない顔だが、君は旅人かい?」 やがてお父さんは青年の存在に気が付き、向き直ります。 「あぁ。そんなもんです」 青年もお父さんに挨拶を返しました。 「お父さん、この人ったらおかしいの。すごい顔して入ってきて、『トイレ貸して』って言うんだよ?」 「ちょっ、お嬢ちゃん! そりゃ言わない約束だぜ!」 「ハハハ、もうこんなに打ち解けたのか。しかし珍しいな。こんな辺鄙(へんぴ)な村に旅人とは。君は何をしにこの村へ?」
/1248ページ

最初のコメントを投稿しよう!