第1話

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   男、座席に手を当てて体を支える    ソフィア、鞄の中から水筒を取り出して、席を立つ。    ソフィアは男に近寄る。 ソフィア「あ、あの、これよかったら……」    男に水筒を差し出す。男は何も言わずにソフィアから水筒を受け取る。    男は水筒の蓋をあけて、流し込むように飲む。口からは水が漏れている。    やがて、男の手元から水筒がするりと落ちる。地面に落ちた水筒は、蓋が空いたままで、中から水が漏れる。    男は唸っている。 ソフィア「え、なに?」    男は顔をあげて、ソフィアを見る。目は真赤に充血しており、肌は青白くなっている。    男はソフィア向かって腕を振り回す。 ソフィア「キャアア!!」    ソフィアは尻餅をつく。    男乗客1が声を上げる。 男乗客1「ぐ、グールだ! グールがいるぞ!」 男乗客2「逃げろぉ!」    その声に乗じて、他の乗客達も悲鳴や大声あげ、席を立ちあがる。そして隣の車両へ我先にと逃げていく。    男はソフィアを捕まえようと、腕を伸ばす。 ソフィア「こ、来ないで!」    後ずさりするソフィア。 〇列車 別車両の中(昼)    席にカタリナ・カミンスキー(18)が、頬杖をついて座っている。    遠くから悲鳴や大声が聞こえて来る。    それを聞いたカタリナは席を立つ。    近くにいた駅員がカタリナを制止させる。 駅員「お待ちください。緊急事態です。席にお座りください」    カタリナ、笑顔を見せる。 カタリナ「ごめんなさい、少しトイレに」    カタリナ、悲鳴がした方向の車両へ歩いて行く。
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