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バージンロードはなぜ父親と歩かなければならないのだろう。
一カ月前、幼少期に父親を亡くした友人の結婚式に参列した際に彼女は母親と入場していたけれど、父親が生きていても母親や兄弟を選ぶことは可能なのだろうか。
もしも花嫁一人でも良いというならば、恵は一人を希望する。
たった一人きり、颯爽と赤い絨毯の上を蝶のように舞うのだ。
自分を苦しめ不自由にするだけの重たい枷も鎖も柵も、ウェディングドレスすらも纏わずに、身軽な体で新郎、晃希の元に歩み寄る。
そうしたらきっと、父親や母親や弟と歩くよりもずっと恵は晴れやかな心地で、その顔には笑顔をめいっぱいに湛えて、愛する晃希の腕のなかに飛び込めることだろう。
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