女神は歌手

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二人は、偶然じゃない。突然、出会ったんだろう。同じタイミングで、同じ事をしている時に。名前は、サトシとサトコ。この出会いは、かれこれ、14年前位に、なるのだろう。二人は正直、明るい場所で、互いの顔を、確認した訳ではない。夜の淡い光が、照らす、ほんの僅かな、出会い。サトシは、記憶喪失気味な所があり、日々、記憶を呼び戻すためだけに、行動を、重ねていた。なにか、思い出せるんじゃないかと。サトコはなんと、歌手になっていたのだ。サトシは、テレビを見ていると、この歌、なんかいいなって思うようになっていた。サトシは、その時までは、なににも気づいてもいないのだ。いつからだろうか。サトシは、その子を、サトコじゃないだろうかと、そのトンネルに、迷い込んでしまうのだ。サトシは、しっかり覚えている。あの時のサトコの印象を。サトシは、サトコの、あの日話した、優しい嘘の言葉を、捨てたのだった。それから、物語は始まった。まもなく15年の月日を迎える。色んな人々と、色んな会話をしながら、積み重ねた、空白の15年。サトシは、その女神の全てを、覚悟するのだろうか。確かに、明らかに、サトシは、変化した。あの頃とは、まるで別人。性格は、ドがつくほど、ド真面目。時に、おちゃらけるけれど、全て、女神が気づかせてくれたかの如く、サトシも完璧の男を目指しているのであろう。それは、既に、遅かった行いかもしれない。けれど、女神の教えとして、この先のサトシの教訓にも、なる事であろう。女神が振り向かなくても。サトシは、時が経つにつれて、全てを繋がりに、変えてしまうのだ。急に現れては、すぐ去る女神。その女神には、なにも情報はないのである。不思議で、不可解な存在。サトシはサトシで、サトコはサトコではないのかもしれない。けれど、なぜ、サトコなのだろうか。二人、愛し合った、あの日の大恋愛。二人は多分、その前から、知り合いだったんだろう。   
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