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「すみません」
佐藤さんに断りスマホを手に取る。
ーー春立さん。
あとで連絡すると言伝てされたことを思い出す。
「春立さん……?」
佐藤さんの視線が鋭く私を見つめた。
「はい」
「出るの?」
ーーどうしよう。
出たい。
でも、怖い。
出たくないけど、出たい。
迷いだらけ。
だが、出られなかった。
「出るなよ」
突然、スマホを抜き取られた。
そして次に佐藤さんに強く抱き締められたのだ。
ーープルルルルル。
しつこく鳴る着信音を聞こえぬようにするように、佐藤さんは片方を手で塞ぎ、もう片方の耳元で「好きだ。俺は飯島一筋だよ」と囁く。
「春立さんなんかやめてしまえ」
私の好きなシャボンの香りではないスパイシーな香りがする。
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