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 ワンルームの部屋がずらりと並んだ、三階建てのマンション。  ほとんどの住人は近くの大学に通う大学生だ。私も隣の部屋に住む橘さんも、その大学に通っていて、時々ばったりドアの前で会う。 「それにしても、ずいぶんため込んだなぁ」  ゴミ置き場にゴミを置いた橘さんが笑う。いつものように穏やかな表情で。  私よりふたつ年上の橘さんと、こんなふうに会話ができるようになったのは、いつからだろう。  一人暮らしを始めたばかりの頃、隣の住人が男性だと知り、正直嫌な気持ちになった。父のこともあってか、男の人は苦手だったし、怖い印象もあったから。  だけど偶然顔を合わせたお隣さんに、穏やかな表情で会釈された時、初対面だったのになぜか安心できた。そのうち自然と挨拶を交わすようになり、会えば一緒に学校へ通う仲になったが、卒業間近な橘さんとこうやって会うのは久しぶりだった。 「はい。でも少しすっきりしました」 「俺もそろそろ片づけなきゃな」  そんな橘さんは、もうすぐここからいなくなる。このマンションの私の隣の部屋から、遠い街の実家へ戻って、そこで就職することが決まっていた。
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