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か細い月が照らす森の中。
小さな灯火が頼りなげに揺れていた。
「ねえ、やっぱり帰ろうよ」
灯火に照らされる二人の人影のうち、小柄な方がささやくように呟いた。
幼い声。闇にとける黒髪と深い緑色の瞳。あどけない表情の少年は、カンテラを持つもう一人の少年に話し掛ける。
「マリアーテへのプレゼントは、やっぱり木の実にしようよ。ルトの実、マリアーテの好物だし。明日の朝探せばいいし」
「駄目だ」
きっぱりと拒絶したカンテラを持つ少年は、鳶色の目を黒髪の少年に向けた。
くすんだ金髪がカンテラの灯りで柔らかく光る。
「いいか、ロビン。今回は特別なんだ。なんたって十の誕生日なんだからな。お前だってわかっているだろう?」
「それは……わかるよ、ギルバート。でも、森の砦に行くのは……」
「なんだ、怖いのかよ?」
「こ、怖くないよ! ……でも、危ないかもしれない。おばあが、もう長いこと放っておかれてるから、獣が住み着いてるかもって言ってたし」
「わかってるよ。だから、ほら」
ギルバートと呼ばれたカンテラを持つ少年は、空いている手で腰に下げた袋をあさって何かを取り出した。
「獣避けの草。親父のをちょっと貰ってきたんだ。これを焚けば、森狼だって犬みたいに逃げていくんだぜ」
自慢げにギルバートは乾燥した赤い草を見せた。
猟師の息子である彼は時折父親に連れられて森に入っているのだ。
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