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「じゃあ迎えに行くからお店が決まったら連絡して」
「大丈夫よ。心配しないで」
「するよ。俺……自分勝手なことを言うけど、今、エマさんに恋人が出来たら、俺はまた行く所が無くなる」
翔太君の哀しげな表情に、私はハッとした。翔太君はカノジョと別れて、住む場所も追い出されて、仕事も辞めてしまった。凄く不安なはずだ。
「分かった。恋人は翔太君が仕事先を見つけて、住む場所も確保出来るまで、作らない。だから安心してここに居て」
「じゃあ迎えに行ってもいいよね?」
「それは大丈夫だってば」
強情な翔太君に苦笑する。なんだろう。大きな犬を飼っている気分だ。但し言う事は聞かない。
「……じゃあ駅に迎えに行く」
それなら、と折れる事にする。不安なのかもしれない。追い出されるって結構辛いよね。……それに近い状況の私は、気持ちが理解出来てしまう。落ち着くまでは仕方ない。翔太君の要望をなるべく叶えていこう。私が折れると翔太君はようやく安心したように、笑った。
こんな笑顔を見ちゃったら仕方ない。翔太君が落ち着くまでは、このままの生活を続けていこう。……ふっと思い出したくないことを何故か思い出す。
ーー元カレのことを。
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