634人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
「…妻って立場は強いって勘違いするから、結婚しない方がいいんじゃないの?」
「ちょ…朋香さん。」
「あ~ごめんね。浮気は男の甲斐性なんて言葉もあるから、色々あると思うけど…」
「俺はしません。」
「…信用できるかなあ…」
「朝子まで…」
「俺、結婚に夢持たない方がいいかな…」
「大学生、結婚なんて、流行熱みたいなものよ。熱が冷めたら唖然とする事の方が多いんだから。」
「朋香さん、やめてくれ~!!」
幸せになる資格なんて、誰にもあって、ないのかもしれない。
今は幸せの予感しかないあたしも、この先どうなるかなんて…分からない。
「…園。」
「ん?」
「愛してる。」
「!!」
あたしの告白に、園を含めた全員が目を見開いた。
あの頃、野田さんに言えなかった言葉。
彼は人のもので…なのに自由な人だった。
すごく…すごく好きだったけど。
あたしには…縛れなかった。
「朝子…」
驚いた顔のままの園が、あたしの頬に触れる。
「あーあ、もう…帰った方が良さそうね。さ、若者、帰るわよ。」
「はいはい。そうですね。ごゆっくり~。」
みんなが笑顔を残して去って行く。
残されたあたしと園と、娘。
「…もう一度、聞きたい。」
「もう言ったわ。」
「もう一度だけ…」
「…また、いつか言うわ…」
「ふっ…おまえらしいな…」
知ってる唇は、すでに懐かしさを伴っていた。
思い出の男が、あたしの夫になる。
初めて会った頃は、あたしが夢中だったのに。
今は…
最初のコメントを投稿しよう!