拒否権がない私と、何かを企む彼

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 あの得体の知れない人をどこまで信じていいのかわからないけれど、ただ、健斗君に何かが『見える』力があるのは本当だと思った。  たとえ私の携帯の中身を全部見たとしても、私が今までしてきた苦労なんてわからないはず。  私はおじいちゃん家の電話番号を「自宅」とだけ登録していたから、両親がいないのなんて普通は気付かない。  電話帳のグループ分けもあえてしていない。  だって「家族」のグループなんて私にはむなしいだけ。  なのに『この歳でこんなに苦労して……』なんて、あっさりと言われちゃった。  その『力』だけは確かなモノだって、信じきってしまった。  何よりも、あの何もかも見すかされてしまうような眼によって……。
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