文化祭一日目(続き)

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side池永実夜(イケナガミヨ) 高校に入学したばかりの頃。先輩に襲われかけた僕を助けてくれた爽乃様を好きになった。泣きじゃくっている僕の頭を撫でてくれたあなたの手をずっと覚えている。あの時のことは一生忘れない。 あれから廊下ですれ違ったら話しかけてくれた。僕はあわあわしてるのに笑いながら他愛ない話をたくさんした。 「親衛隊?実夜そんなん作りたいん?別にええけど…」 あの時、少し表情が暗かったのに気づけばよかった。せっかく仲良くなれたのに、少し距離ができた瞬間だった。 「爽乃くん」と呼んでいたのが「爽乃様」に変わった。 「実夜」と呼んでくれたのが「池永」に変わった。 好きになればなるほど爽乃様は離れていった。自分でもダメだって思うほど行動はエスカレートしていった。意外と騒がしいのが嫌いな爽乃様のために近づく奴を制裁した。すればするほど冷めた目で見られるようになった。爽乃様以外の人も離れていった。でも、それでも。自分を助けてくれた爽乃様を守りたかった。好きになってほしかった。 頑張っても頑張っても、僕は好きなってもらえなかったのに。ぽっと出の冴島くんを爽乃様は好きなった。 嫌いだった。 だから、あの日。こてんぱんにしようとして、逆に恥をかかされた。 分かってた。自分にはもう無理なのだと。 完全に嫌われた。 もう戻れないって分かってる。 「この愚図!!何逃がしてんだよ!お前ほんとに使えないな…!」 分かってるけど、今度は。 自業自得だと思うから。 自分がどうなったとしても爽乃様が本気で好きになっている、彼を守りたい。
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