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天国にて
目が覚めるとそこには……
見渡す限りの雲景色が広がってました。
もこもこ。
「──って、川端康成っぽいことしてる場合じゃないな……」
なんだよここ。
どこだよここ。
視界の上は青い空。
視界の下は白い雲。
それ以外に目に映るのは──自分。
飴屋雨粒(あめやあまつぶ)だけがそこにいた。
「なんだよこれ……」
雨粒は自分の置かれた状況を飲み込めないでいた。
自分は一体なぜこんなところにいるんだろう。
自らここに来たわけではないし、連れてこられた訳でもない。まぁ、後者の方は意識が無くとも運ばれてさえしまえば有り得るが。そうなると一体誰がこんなことを、とミステリーが始まってしまうが、その期待に応えるように心当たりがありすぎる。そういうことに巻き込まれやすいのだ。ありすぎて犯人が分からないパターンである。
森の中に隠された葉っぱを探せ。
無理だ。
「まぁ、犯人は誰でもいいとして──」
よっ、と。
座していた私はとりあえず立ち上がった。
景色の変わらないパノラマ。
青空と白雲の二層になっている視界は、めをひらいてから五分で見飽き始めている。
同じ景色を眺め続けていたら気が狂うらしいが本当かな。
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