エピローグ

2/3
1402人が本棚に入れています
本棚に追加
/255ページ
「お父さんとお母さんはこれまでずっと、二人で過ごしたくてもそれが叶わなかったと思うんです。俺は本当の両親を知ることが出来たし、今はこうして卓巳さんが傍に居てくれます。……だけど二人は長い間ずっと会えないままだっただろうから、その分の時間を、取り戻して欲しいと思って」 「だからって、お前が遠慮する必要もないんだぞ?」 「遠慮なんてしてませんよ」  卓巳の方へ向き直って、柚斗が口許を綻ばせる。  この数年間でかなり背が伸びた柚斗は、今では卓巳と頭半分ほどしか身長も変わらなくなり、見た目も少年から青年のそれに変わりつつある。お陰でふとした拍子に笑った顔も、随分と大人びてきた。 「俺にとって今一番大事なのは、卓巳さんと過ごす時間です。だからそんな時間を、お父さんたちにも気兼ねなく味わって欲しいんです。……それに、大事な人に会いたくても会えない辛さは、俺も凄くよくわかるから」 「……すっかり頼もしくなったな、お前」  泣いてばかりだった柚斗を少し懐かしくも思いながら、卓巳はゆっくりハンドルを切る。  卓巳が運転する車は海岸線を逸れ、高台へ続く坂道を上った先にある自宅の駐車場へと滑り込んだ。  自宅と言っても、此処に暮らしているのは卓巳と柚斗の二人だけ。元々西園寺家が所有していた別荘の一つを、卓巳たちは二人の住まいとして譲ってもらった。     
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!