1970

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 KAZAMIテレビのプロデューサーの遠山勝夫は、美しい妻・今日子がいながら、多くの女と浮気していた。今日子と愛人たちはお互いの存在を知っており、奇妙な友情が芽生えてゆく。あるとき愛人の一人で女子プロボウラー(この年、中山律子ってプロボウラーが活躍した)の加奈子は今日子を訪ね、今日子と愛人たちで遠山を殺す計画を話し合う。  ダンキンドーナツ銀座店に勤務している藤木佳子はそれを聞いてこらえきれなくて、遠山に打ち明けてしまう。遠山に問い詰められた今日子はあっさり計画を認める。  遠山は廃墟で女に囲まれ、射殺される場面を想像する。遠山は愛人関係を清算するため、佳子に狂言殺人を持ち掛ける。  2月11日、横須賀の工場跡に愛人たちが集まる。  この日は国産初の人工衛星『おおすみ』が打ち上げられた。  佳子は遠山が用意した空砲を詰めたピストルで遠山を撃ち、殺したように見せかける。  愛人たちは妻に罪を着せたつもりで逃げ出すが、純粋な水城優香里は後を追って自殺する。  渋谷にあるアパートから飛び降りた。  地獄とも天国ともつかない魔界に優香里はやって来た。仙人に言われた。 「成仏するには50年が必要だ」  優香里は遥かなる旅に出たのであった。  優香里は27歳だった。  旅が終わってもまだ77歳だ。  早すぎる死に母親や父親、友人たちは号泣していた。  前年、アメリカンコミックスで『ヴァンピレラ』ってゆー女吸血鬼が流行した。  血の流れる川があり、2つの太陽が昇る惑星ドラクロンの出身者であるヴァンピレラは生き物の生き血を食糧とし、コウモリに変身する。  地球に送り込まれたヴァンピレラは航行中の宇宙飛行士を襲い、宇宙船を奪って地球に帰還する。  彼女は瞬間移動や、人間には聞こえない音を聞いたり、スタミナや反射神経も武器で、再生能力も高い。  ワタシもそーゆー風になりたい。  優香里は思った。  4月8日、大阪にあるガスタンクが爆発して79人が亡くなった。  優香里はとっくに死んでいる為、無傷だった。  4月26日、万博太陽の塔で乗っ取り事件があった。青女房って女官姿の妖怪で、鎌倉時代は源実朝を呪ったらしい。  1213年8月18日のことで、19日の丑の刻には大地震が発生した。  1970年11月25日、市谷の駐屯地で三島由紀夫が刃物で腹をかっさばいて自殺した。  
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