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「幸せそうでよかった」
「うん、すっごく幸せ」
そう言って笑う明日美は昔よりほんの少しふくよかになったみたいだ。だけど愛されている安心からか、一緒にいると安心する雰囲気をたたえている。
瑞生との離婚の後はかなり落ち込んでいたらしい。
もう男の人はいいやと諦めていたが、数年前に優しい人と出会って再婚したと明日美は話してくれた。
花のことも実の娘のように大切にしてくれると聞いて安心する。
「みっちゃん、ごめんね」
「ん?」
表情を曇らせながら明日美は小さく頭を下げる。
「あの時、知らなかったんだけど両親が酷いことを言ったんでしょう。後から知って……みっちゃんに謝ろうと思ったんだけどもう連絡がつかなくて……ごめんなさい」
「そんなこと……っ。謝らなくていいよ。ぼくの方こそ責められて当然のことをしたんだし、あれくらい当然だよ」
当時は言葉の一つ一つが突き刺さった。
見ないふりをしていた傷を暴かれ、まだ膿んでいた場所をほじくりかえされたような、絶望にも似た気持ちもあった。
だけど子供を心配し、守ろうとした彼らのことは責められない。親なら当然のことだと思う。
「それより花が成人か」
今日は花の20回目の誕生日だった。
小学生に上がる前のまだ小さかった花しか知らない瑞生には大人になった花が信じられない。
どんな顔で会えばいいのかとためらう瑞生を明日美は説得し、今回、みんなでお祝いすることに決まったのだった。
「明日美の旦那さんに会うのも緊張するよ」
「大丈夫、すっごい優しい人なの。みっちゃんみたく美人じゃないんだけどね」
フフっといたずらっ子のように笑う明日美とこうした時間を過ごせるなんてあの頃は考えたこともなかった。
「あっ、きたきた!」
遠くから2人のシルエットが見える。一人はちょっとズングリとした風情の男性で、その少し後ろにスラっとした可憐な女性がためらいながらこちらへと向かってくる。
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