第一章ヤンキー娘、異世界に行く

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「礼を言う。私はターベル国騎士団隊長のベルナール・シュヴァイン。助けて頂いた貴殿の名を伺っても宜しいか?」 そう言って兜を取って皆が私に感謝の意味で膝まづいた。皆が膝まづいた事にも驚いたが、目の前のベルナールという人間に一番驚いた。 "銀魔" その異名の通り、色素の薄い銀の髪に銀の瞳。そして圧巻の強さをもつ剣士か…。しかもなんちゅう端正な顔や…、お前の遺伝子、羨ましい限りやな。 じーっと"銀魔"と呼ばれるベルナールという男を見ていたら、汗で額に髪がべたりと張り付いているのが気になった。この綺麗な顔を邪魔するように張り付いた髪の毛。脂ぎった剥げたおっさんだったらお似合いだが、目の前の男のこの端正な顔を邪魔するものでしかない。 だからなのか自然と手が出た。 額に触れてべたりと張り付いている髪の毛を後ろにかきあげた。 手触りのいい毛質に、近所の人懐っこい野良猫を思い出す。よくこうして撫でてやると、目の前にいる奴と同じように目を細めてたなぁ…。 そんな思い出に浸りながら、何度も何度も手ぐしでかきあげるように頭を撫でる。 ややあって、がしっと手首を掴まれた。そこで、自分が何をしたか悟る。 無言で見つめ合うこと数分。「貴殿の名を…」と、再度問いかけられた。 『…か……かん…神崎桃花。日本という国から来ました』 「二ホン?そのような国の名は聞いた事が無いが………」 横に居た騎士に目をやり、聞いた事があるかというように振った。 「私も聞いた事がありません…。それにこの女子の瞳の色といい、着ているものといい全く見た事もありません」 そう言って上から下までマジマジとその男に見られた。その見方があまりに不躾だった為、眉間に皺がよる。すると突然、目の前が暗くなった。何事かと思って暗くなった原因の物から顔を出す。 それはベルナールという男のマントだった。
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