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第十一話「Happy Birthday」
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その門の前に立った時、花衣は「すごい、亜利紗にぴったり……」と心の中で呟いた。
頭より高い鉄製の黒門扉は、柵にバラの蔦が絡みついた優美なデザインで、門扉の左右からは同じ高さの白壁が長く伸びていた。
柵の隙間から見える洋館は、ヨーロッパ映画に出てくる貴族の別荘を思わせる洗練されたデザインで、シンメトリーな二階建ての壁は外壁と同じ目にも眩しい白だった。
玄関部の車寄せの上は二階バルコニーとなっており、張り出した上部と円柱形の太い柱が無言の圧を掛けてくる。
一応、先日の買ったばかりのドレスで正装してきた花衣だったが、しばらく門の前に立ったまま、呼び鈴を押す勇気を出せずにいた。
するとそこに、ロングコートを騎士のように羽織った紫苑がやって来た。
「花衣」
凛々しい声に名前を呼ばれ、花衣は紫苑の顔を見てホッとしたように表情を緩めた。
「紫苑さん……。こんにちは」
「こんにちは。なんで入らないの? 亜利紗に呼ばれて来たんでしょ?」
「はい……。でもなんか、入り辛くて……」
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