4  ×××

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 それでも、構わない。  あと二十分もすれば尽きる私の命の、残りの全てを、目の前の少女に捧げたい。  ガリーナは、伝わらないと知りつつもゆっくり、言葉を紡いだ。  謝罪、感謝、今までの事。  警告ランプは、音も無く明滅を続ける。  最後にもう一度感謝の言葉を呟いて、止まらない涙を流しながら、ガリーナは微笑んだ。  すると人魚も、口の端を曲げ、口を開き、ガリーナと同じ表情を作ろうとした。  本当に笑っているわけではない。ただ、鸚鵡の様に真似をしただけだ。  それでも、心から笑った笑顔が、見たくて。  ガリーナは笑顔を作り、指で目元を指し示す。こうやって笑うんだよ、という様に。  人魚は首を傾げながら、また笑顔を作ってみせる。やはり、まだ上手く笑えない。  それでも、ガリーナは構わなかった。何度も何度も、手本を見せて、その人魚に満面の笑みを作って欲しかった。  自分の涙の所為で、なかなか伝えられないな、と少し悔しい思いをしながら。  警告ランプは、音も無く明滅を続ける。  二人だけの世界で。 (了)
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