44人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
それでも、構わない。
あと二十分もすれば尽きる私の命の、残りの全てを、目の前の少女に捧げたい。
ガリーナは、伝わらないと知りつつもゆっくり、言葉を紡いだ。
謝罪、感謝、今までの事。
警告ランプは、音も無く明滅を続ける。
最後にもう一度感謝の言葉を呟いて、止まらない涙を流しながら、ガリーナは微笑んだ。
すると人魚も、口の端を曲げ、口を開き、ガリーナと同じ表情を作ろうとした。
本当に笑っているわけではない。ただ、鸚鵡の様に真似をしただけだ。
それでも、心から笑った笑顔が、見たくて。
ガリーナは笑顔を作り、指で目元を指し示す。こうやって笑うんだよ、という様に。
人魚は首を傾げながら、また笑顔を作ってみせる。やはり、まだ上手く笑えない。
それでも、ガリーナは構わなかった。何度も何度も、手本を見せて、その人魚に満面の笑みを作って欲しかった。
自分の涙の所為で、なかなか伝えられないな、と少し悔しい思いをしながら。
警告ランプは、音も無く明滅を続ける。
二人だけの世界で。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!