意地っぱりな薬指

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「俺って信用無かったんだな」 「ううっ……」 「でもまあ、逆に良かったのかも しれないな」 「へ?」 明るく言い放つ隆司の顔を見上げた。 こんな酷いことされて、何が良かったって いうの? 「今回のことで、俺がちゃんと文香に好かれて いるのがわかったから」 「なに言ってんの!好きに決まってるでしょ。 どうでもいい人と二年も付き合うほど、暇じゃ ないわよ」 「でも、文香は今まで言ってくれたことは無い。 何度ドタキャンしても怒りもしないし。文香は 俺を好きじゃないのかと思い始めていた」 「そんな……」 私が隆司を不安にさせてたの? ものわかりの良いふりをして、寂しさを 見せないようにと意地を張っていたせいで。 「付き合いを隠すのも、もううんざりしてた。 文香がおとなしくやられるとは思えないが、 もし何かあったとして、俺がおまえを 守れないほど、頼りない男だと思うか?」 「思わ、ない……」 彼は守ると決めたら、相手が誰であろうと、 容赦なく斬りかかっていくだろう。 私は何よりもそれが怖くて。 だから、できる限りトラブルを避けたかった。 「だったら、ほら」 隆司が改めて、薬指に指輪を滑らせる。 「赦してくれるの?」 「お互い惚れてるのに別れる必要あるのか? 誤解した経緯も頷けるし、俺も文香を 試したからな」 そうだった。隆司は指輪のことを、初めから 知っていたのにわざと驚いて見せた。 私の本心を引き出すために。
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